大分県豊後高田市で2014年、実家に放火して母親と妹を殺害したとして、殺人と現住建造物等放火の罪に問われている同県中津市、無職溝部和也被告(32)の裁判員裁判が26日、大分地裁(今泉裕登裁判長)であり、検察側は「犯行態様が悪質」などと述べ、無期懲役を求刑した。
放火の手段が特定されていない中、火災が放火かどうかなどが争点だった。弁護側は一貫して無罪を主張している。公判はこの日で結審し、判決は2月13日に言い渡される。
検察側はこの日の論告で、現場の電器製品の状況などから、「失火は考えられない」とした上で、溝部被告が金銭トラブルを抱えていたことなどを指摘。溝部被告が放火したと考えないと説明がつかないなどと主張した。事件は保険金目的として「身勝手極まりない」とした。
弁護側はこれまで、焼け跡から油性反応が出ず、放火の可能性を示す痕跡は見つかっていないと指摘してきた。そのうえで、現場の電源タップに経年劣化の形跡があったことを挙げ、配線にはショートした痕もあったとして、「漏電による火災の可能性が否定できない」と反論。両罪について無罪を主張していた。
起訴状によると、溝部被告は14年12月19日、実家1階の居間に何らかの方法で放火し、2階建て住宅約150平方メートルを全焼させ、2階で就寝中だった母親の溝部喜美代さん(当時56)と妹の亜美さん(同26)を焼死させたとされる。(興野優平)