施設レベルと扱える主な病原体
アフリカのエボラ出血熱など、グローバル化に伴う感染症の脅威が高まる中、国内2カ所目となる、危険度の最も高い病原体を扱う実験施設(BSL4)を長崎大に建設する検討が続いている。生きたウイルスの保管や培養が可能で、治療薬の研究などに役立つと期待される一方、安全面での地元の不安にどう応えていくのか。大学や行政の丁寧な対応が求められる。
10月上旬、長崎大で開かれたシンポジウム。集まった市民約400人を前に、内閣官房国際感染症対策調整室の山田安秀室長は呼びかけた。「人材育成や研究開発で世界に貢献するため、建設に向けて全面的に支援します」
感染症対策を強化したい国は2006年、BSL4施設設置の調査研究を開始。その後、09年に新型インフルエンザが世界的に流行し、14年にはエボラ出血熱による死者がアフリカで大量発生するなど、海外から新たな感染症が容易に入る恐れが高まった。
千葉大真菌医学研究センターの笹川千尋センター長は「以前は結核など国内の感染症対策が中心で、海外から感染症が入ってくることは考えていなかった。感染症に対する考え方はリセットする必要がある。フェーズは変わった」と話す。
こうした動きを背景に長崎大は10年、BSL4施設の設置検討を表明した。同大には1967年にできた「熱帯医学研究所」があり、国内有数の感染症研究の拠点だ。
国も今年2月、新たな基本計画を策定し、後押しをする。長崎大のBSL4施設を中心に、大学や製薬企業が感染症研究を進める方針が盛り込まれた。
国内では長年、エボラ出血熱のような危険度の高い病気のウイルスを検出した場合、患者の血液などの培養ができず、完治したかを判断できなかった。昨年8月、国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)のBSL4施設の稼働が合意され、完治の確認は可能になった。
だが、地元市との取り決めで、現時点では基礎研究に使えず、国際的には不十分とされる。施設が全国に1カ所だけでは病原体の搬送に時間がかかり、緊急対応できない可能性もある。
長崎大は、施設をキャンパス内の熱帯医学研究所の近くに建て、早ければ4年後の稼働を目指す。ウイルスを輸入するなどして基礎研究を進め、医薬品の開発や人材育成などに力を入れる方針だ。