リクシルのQB加藤翔平
アメリカンフットボールの社会人Xリーグ(朝日新聞社など主催)は12日からジャパンエックスボウル(JXB)トーナメントが始まる。いよいよ「負けたら終わり」の日々だ。
Xリーグ特集
初戦の準々決勝は、12日に横浜スタジアムでオービック(リーグ戦2位)―エレコム神戸(7位、ワイルドカード)、富士通(1位)―アサヒ飲料(8位、ワイルドカード)、IBM(5位)―リクシル(4位)の3試合、13日に大阪・万博記念競技場でパナソニック(3位)―アサヒビール(6位)の対戦がある。富士通、オービック、パナソニックの「3強」は優位に立つ。注目は、IBM―リクシルのハイスコア合戦だろう。
両チームは昨季の準決勝でIBM69―54リクシル、今季のリーグ戦でリクシル52―48IBMと、めまぐるしい点取り合戦を繰り広げてきた。今季のリーグ戦1試合平均得点は、リクシルが1位で40・7、IBMが2位で33・8。両チームの高い得点力を支えるのが、強力なパス攻撃だ。
リクシルのQB加藤翔平(28、関学大)はリーグ戦6試合で202回のパスを投げて125回成功させ、1510ヤードを獲得。15のタッチダウン(TD)を奪い、被インターセプト(INT)は6。今季はノジマ相模原とIBMに逆転勝ち。パナソニックには競り負けたものの、3―30から一時は逆転した。
その中心にいるのが加藤だ。爆発力と安定感を兼ね備えたエースになった。リクシルの森清之ヘッドコーチ(52)は「リードされてる展開でも、加藤は焦ることなく普通にやれてる。そこが成長した部分です」と語る。エースが落ち着き、逆転の経験を積み重ねることで、チーム全体にどんなときも動じない空気ができてきた。リーグ戦序盤から上位対決を組み入れる新方式のもと、最もたくましさを身につけたチームかもしれない。
IBMのQBケビン・クラフト(30、米UCLA)はリーグ戦序盤はけがで欠場。73回投げて49回の成功で733ヤードを稼ぎ、6TD、6INT。クラフトの穴を埋めてきたのが左投げの新人QB政本悠起(22、早大)だ。81回投げて51回の成功で496ヤード、4TD、5INT。昨年の甲子園ボウル終盤で見せた走りも政本の持ち味だ。パスターゲットがカバーされていると見るや、思い切って駆け出す。身長178センチ、体重85キロの体でスピードに乗り、タックルをはじき飛ばしていく。
点を取って取られての展開は、当事者にしてみれば、できれば避けたい。しかしお客さんにとっては、これほど単純に楽しめる試合もない。リクシルとIBMの対戦は言わば、「日本フットボール界の花火大会」なのだ。12日は横浜スタジアムで季節外れの花火大会を満喫しよう。(篠原大輔)