脳梗塞(こうそく)を起こした直後にカテーテルを使って血管の詰まりを除く「血管内治療」について、日本脳神経血管内治療学会は25日、専門医が偏在し、45都道府県の郊外などで患者が治療を受けられない可能性が高いとする調査結果を公表した。
脳梗塞による死亡数は年間約6万5千人(2015年)。世界規模の研究では、この治療によって社会復帰できる患者の割合は、従来と比べて14%高まるとされる。国内では10年に公的な医療保険が適用されるようになったが、発症から原則8時間以内に治療する必要があり、対応できる医療機関の分布や連携が普及のカギになっている。
同学会は、全国の約150施設にこの治療の対応状況などを調査。その結果、全国で1千人以上いる専門医が、都市部に集中し、地方で不足していた。45都道府県では患者の搬送が間に合わず、治療を受けられない地域がある可能性が高かった。
一方、鳥取県と石川県は、県内の全域で患者の治療に対応できることも分かった。治療できる施設は多くないが、大学病院出身の医師らが連携し、治療が必要な患者をスムーズに施設に搬送できるためと考えられるという。
調査を担当した兵庫医大の吉村紳一教授は「初めて全国の状況を調べたが、治療を受けられない人が多くいる。医療機関の連携強化が必要だ。行政にも働きかけたい」と話す。都道府県の専門医の数は同日、学会のHP(
http://www.cs-oto.com/jsnet32//gakkaisengen.html
)に掲載された。(合田禄)