核兵器の惨禍を今に伝え、核廃絶のシンボルとなった原爆ドーム(広島市)が12月7日、世界遺産の登録から20年を迎える。朝日新聞社は今月、市の許可を得て、普段は立ち入りが制限されているドーム内を撮影した。被爆による損傷に加えて老朽化も目立つが、永久保存に向けた取り組みも続いている。
原爆ドーム内部の360度パノラマ
写真特集「原爆ドーム、世界遺産20年」
特集:核といのちを考える
■四方八方に支柱
原爆ドームは広島市中心部を流れる元安川沿いにある。正面玄関から裏に回ると、爆心地に近い建物東側には「塀」のように見える外壁が続いていた。被爆するまでは3階まであった壁は現在、1階部分しか残っていない。記者らは今回、崩れた外壁のすき間からドーム内に入った。
ドームは101年前、広島県物産陳列館として完成。チェコの建築家ヤン・レツルが設計した3階建てれんが造りの洋館だった。2、3階部分は被爆時の爆風で崩れ落ちたため、足元には無数のれんがやがれきが積み上がっていた。南側に残る鋳鉄製のらせん階段が往時の姿をしのばせるが、熱線を浴びたためか一部が曲がったまま3階まで延びていた。
中庭を横切り、かつては階段室だった正面中央部分へ。高さ約25メートルの楕円(だえん)形のドーム(長軸約11メートル、短軸約8メートル)の真下は内壁のしっくいが失われ、赤黒いれんががむきだしになっていた。壁面に一定間隔で空いている穴から各階の床の高さが想像できる。見上げると、鉄骨の骨組みだけになったドームの円蓋(えんがい)から空が見えた。
1945年8月6日朝、ドーム…