国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門問題で、農林水産省は30日、長崎地裁の和解協議で提案していた有明海再生に向けた基金案をとりまとめ、同地裁に提出した。開門しない代わりの水産資源回復策との位置づけで、規模は100億円。ただ漁業者に開門を求める声は根強く、和解が成立するかは不透明だ。
諫早湾訴訟、国が基金創設提案へ 開門に代わる和解案
同省がまとめた基金案によると、有明海の沿岸4県や漁業団体が運営主体となり、二枚貝の養殖施設の整備や資材購入など助成対象は32項目を想定。事前に漁業団体に要望事業を聞き取ったという。金額はこれらの事業の必要額を積算したといい、積み増しは一切行わないことも明記した。
有明海の再生対策にはすでに毎年約18億円の国費が養殖技術の開発などに投じられているが、調査や実験など使い道は限られていた。同省の横井績・農地資源課長は「基金でより漁業者ニーズに沿った事業が可能になる。政府内で調整したギリギリの額で、長年にわたる問題解決への強い思いを込めた」と説明する。
和解には開門を求めて国と裁判で争う漁業者ら原告団との合意が欠かせないが、開門しないことが前提にある限り基金案は受け入れられないと一貫して拒否している。漁業団体も同様の姿勢で、横井課長は「成立見込みはナローパス(細い道)だが、丁寧に説明して成案になるよう最大限努力したい」と話している。