激しい戦闘が続くシリア情勢をめぐり、国連総会(193カ国)は9日、即時停戦と支援物資の搬入を求める決議を122カ国の賛成で採択した。総会の決議に拘束力はないが、国際社会の意思を示す効果がある。安全保障理事会で同種の決議案がロシアと中国の拒否権で実現せず、戦闘が止まらないなか、総会が動いた形だ。
シリア休戦決議、安保理で否決 中ロが拒否権
カナダ作成の決議は、市民への攻撃や都市包囲の停止、即時停戦のほか、シリア全域への「無条件での人道支援の提供」を求めている。採決では、ロシアや中国、シリア、北朝鮮、キューバ、南スーダン、ベネズエラなど13カ国が反対し、36カ国が棄権した。
米国のパワー国連大使は「ロシアとアサド(シリア大統領)に大虐殺をやめるよう伝える投票だ」と各国に賛同を呼び掛けた。一方、ロシアのチュルキン国連大使は、シリア政府への非難やテロの脅威の過度な単純化など「重大な欠点」があるとして反対。欧米について「シリア政府を追放し、現地の政治的、民族的、宗教的な地図を書き換えようとしている。現代における強引な植民地主義だ」と批判した。
安保理では今月5日、人道支援のために7日間の休戦を求める決議案を採決したが、ロシアと中国が拒否権を発動。シリア内戦をめぐる安保理決議での拒否権はロシアが6回目、中国が5回目となった。
シリアでは、反体制派が支配するアレッポ東部が政権軍に包囲され、11月から相次いで陥落。アサド政権とロシア軍の攻撃で、食糧や医療品が届かず、電気も水も供給されない状態に陥っている。(ニューヨーク=金成隆一)