災害発生時の豆知識が書かれたトイレットペーパー。カラーの文字が目立つ
お尻を拭くだけではもったいない――。静岡県富士市比奈の林製紙(林浩之社長)が製作する「読むトイレットペーパー」が人気だ。クイズから小説、防災情報まで製品は30種類以上。県内外の公共機関や企業からもオリジナル製品づくりの依頼が相次ぐ。
「どの入り口がゴールまで繫(つな)がっているかな?」
トイレットペーパーに描かれていたのは迷路のパズル。ときながらクルクル引っ張っていくと、さらに難しい問題が登場する。まさに「巻物」だ。
同社はこうした「読むトイレットペーパー」を主に企業の販売促進用グッズとして生産、販売している。最近ではインターネット通販で買い求める個人客も増えているという。広報担当の難波美由紀さんは「トイレは人が静かな環境で一人になれる数少ない空間。だからこそ、ついつい続きが読みたくなるんではないでしょうか」と話す。
開発のきっかけは林社長の一言だった。おしりを拭くのが本来の役割だが、「面白くて、付加価値を生み出すようなものは作れないだろうか」と、社員から印刷する内容のアイデアを募ったという。こうして、英単語のクイズや防災アドバイスなど最初の6種類を生産したのが10年前。これまでに30種類以上を世に送り出したという。
広く知られるようになっったのは2009年。小説「リング」などのヒット作がある浜松市出身の作家鈴木光司さんに依頼し、鈴木さん書き下ろしのホラー小説をプリントした製品を製作した。これが評判を呼び、1カ月で10万個を販売する大ヒットとなった。
特殊詐欺への注意を呼びかける製品もある。これは社員が富士警察署に何度も赴いて警察官から「架空請求」や「還付金名目」などさまざまな手口のレクチャーを受けて製作したという。「知らないメールに返信しない・すぐに振り込まない」というメッセージも目立つ文字で添えた。