ゴラン高原のふもとに集まったイスラエル軍車両。奥の丘陵地帯からゴラン高原=10日、杉本康弘撮影
イスラエルの占領地ゴラン高原に対し、シリア領内に展開するイラン部隊が行ったとされるロケット弾攻撃について、イスラエルのネタニヤフ首相は10日、「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」とイランを非難した。一方、イラン外務省のガセミ報道官は11日、「根拠がなく、作り話だ」として、イランの関与を否定したが、イスラエルとイランの軍事衝突の激化が懸念される。
イスラエル軍「シリアのイラン軍から攻撃」 報復で空爆
イスラエル軍は、イランの精鋭部隊・革命防衛隊が10日、ゴラン高原のイスラエル軍拠点に向けてロケット弾約20発を発射したとしている。これを受けて、イスラエルは同日、シリア領内の革命防衛隊の拠点数十カ所を「報復空爆した」と発表した。イスラエル軍の対イラン攻撃としては過去最大級で、ネタニヤフ首相は声明で「適切な対応だった」とした。在英NGOシリア人権監視団などによると、この空爆で少なくとも23人が死亡したという。
イスラエル軍は、隣国シリアで軍事拠点を構築するイランの部隊がゴラン高原に対して報復攻撃を行う可能性があるとして警戒。イスラエル軍の戦車が展開し、対空防衛システムが配備された。
ゴラン高原の住民で、観光業シャロン・ナイムさん(47)は「10日未明まですさまじい爆発音で眠れなかった」と証言。イスラエル軍は、市民保護のために避難用シェルターを使えるように指示した。(エルサレム=渡辺丘、テヘラン=杉崎慎弥)