ミズナラの苗木をシカの食害から守るネット=山梨県山梨市牧丘町の県有林、河合博司撮影
「ムーミン」に出てくる「ニョロニョロ」? 山梨県北部の山林に不思議な風景が広がっている。標高約1600メートルの山梨県山梨市牧丘町の県有林で、植林したミズナラの苗木をシカから守るための白いネットだ。
周辺では15年ほど前からシカが急増。植林や間伐作業に携わる甲州市の楠(くすのき)学さん(62)は「シカが好むモミは全滅した。苗木は先端を食べられるのでうまく育たない」と話す。県は、狩猟でシカを減らすとともに、2012年度からシカ以外の多様な動植物も生きることができるよう広葉樹の森作りを始めた。牧丘町ではカラマツ林の一部を伐採し、ドングリが実るミズナラ約7300本(約2・4ヘクタール)を植えた。富士北麓(ほくろく)、八ケ岳山麓(さんろく)、櫛形(くしがた)山周辺の県有林でも同じような事業を展開している。
県森林環境部によると、ネットは10年以上たつと自然に分解する素材で、ミズナラはネットを突き抜けて成長することもできる。10年後は、幹をシカの食害から守るトタン状の「樹皮ガード」で保護する予定だ。ただ、通常の植林より手間と費用が倍以上かかるという。担当者は「一度自然のバランスを崩すと元に戻すのは難しい。まだ試行錯誤の段階です」と話す。(河合博司)