チェコ東部ブルニェネツの工場跡で、シンドラー氏の執務室があった建物(右)の前に立つ記念財団のノバクさん=喜田尚撮影
スティーブン・スピルバーグ監督の映画「シンドラーのリスト」に描かれたチェコの工場跡が昨年10月、政府から歴史文化保護地区に指定された。実業家オスカー・シンドラー氏に救われたユダヤ人従業員らが第2次大戦の終戦を迎えた場所だ。背景には、戦後故郷を追われたドイツ系の元住民との和解の動きがある。
工場跡の広い敷地には、崩れかけたれんがの建物が点在していた。
「ここに立ってこんなふうに話したんじゃないか」
昨春創設された「オスカー・シンドラー記念財団」のヤロスラフ・ノバクさん(49)が作業場のあった建物の1階で木製の台に登り、ポーズを取った。ドイツ降伏の日、シンドラー氏が、解放が決まったユダヤ人従業員らを前に演説した様子をまねして見せた。
大戦末期、ナチスはユダヤ人の「最終処分」(虐殺)を急いだ。ポーランドで金属工場を経営していたシンドラー氏は、ユダヤ人らを自身の故郷スビタビに近いチェコ東部の村ブルニェネツの工場に移し、1100人以上を救った。そのために作った名簿が「シンドラーのリスト」だ。
工場は戦後の共産政権下で国営の繊維工場に。1989年の民主化後に民営化されたが、2009年に倒産し、放置された。保護地区指定の動きは、16年春になってのことだ。
映画が93年に公開されて以来…