佐藤真央さんのブログの画面
大学を休むのになぜお金がかかるの? 留学や病気、経済的な理由で休学する場合にかかる費用の値下げを目指して奮闘した女性のブログが話題だ。休学費用は大学によって無料から数十万円と差がある。休学する学生が増える中、費用はどうあるべきか。
【特集】受験する君へ
ブログを書いたのは神奈川県の会社員佐藤真央さん(26)。日本女子大(東京都)に在籍していた2012年、世界旅行をするため1年間休学した。昨年10月、その時の体験を記録するためのブログに、休学費用値下げ交渉の経緯を書くと、ツイッターなどで転載が繰り返され、30万回以上閲覧された。
「66万円?」
佐藤さんが休学費用を知ったのは3年生だった11年夏。1年間休む場合、施設設備費と半額分の授業料の納付が必要と大学から説明を受けた。友人が通っていた大学より高いことに疑問を感じ、約50大学の費用を調べた。学生総会では、休学費用減額を盛り込んだ学則改正を訴えた。秋には嘆願書を大学に提出。だが、値下げは実現しなかった。
ブログでは、「日本女子大学を本気で変えようとした話。」と題した記事に当時の心境を軽妙な文章で書き起こした。疑問を持った時の気持ちは「なぜそんな高額な費用を請求されるのか」「私のボンビーガール魂に火がついた。(笑)」。訴えが届かなかった時は、「負けた。私の闘いは終わった」。佐藤さんは、アルバイトでためた160万円の中から休学費用を払い、12年夏から旅行に出た。
「こんなことあったな」とブログに書き込むと、たちまち話題となり、「休学費について知らなかった」「行動力すごい」と反響が寄せられた。
佐藤さんは現在イベントなどを通じて子どもたちに英会話や世界の出来事を教える仕事をしている。旅行の影響もあって、「自分の意思を伝えられる子を育てたい」と思ったという。「私に出来ることはもうないけれど、いまの学生に何かが伝わったのであればうれしい」
日本女子大広報課によると、現在も規定は変わっておらず、学部によって異なるが60万円ほどの納付が必要。担当者は「重要な課題と捉え、費用の減額を含めて見直しを検討している」と説明した。
■対象者増え減額の動きも
大学を休学する学生は増えている。文部科学省が国公私立大、短大、高専計約1千校を対象に実施した調査では、2012年度の休学者は約6万7千人。全学生数に占める割合は2・3%で、07年度調査より0・5ポイント増えた。理由は経済的理由、海外留学、病気・けがの順で多く、海外留学の割合が増えている。
朝日新聞が、学生数の多い約50大学の休学費用を調べてみると、私大の多くが授業料の一部や「在籍料」「施設設備費」といった名目の費用の納付を規定していた。年間10万~15万円の大学が多く、「休学中も図書館など大学施設が利用できるため」との理由が多かった。国立大は全額免除の大学が多かった。
休学者の増加を受けて、ここ最近、費用を値下げした大学もある。甲南大(神戸市)は、来年度から現在年30万円の休学費用を半額の15万円にすると昨年11月に決めた。広報課の担当者は「少しでも学生の負担が減ればと考えた」と話した。
中央大(東京都)は14年度まで、授業料の半額と施設設備費を求めていたが、15年度から施設設備費のみの徴収に変更した。金額は学部によって異なるが、法学部の場合は約57万円から約18万円に下がった。学生から値下げを求める意見が上がったことを踏まえた判断だという。
慶応大(同)も09年度から、半額分の納付を求めていた授業料や実験実習費を全額免除した。現在は在籍基本料と施設設備費のみで、文学部だと08年度は年約45万円だったのが、09年度から年25万円にした。広報室は「学生が国際体験を積む機会をさらに拡大することを企図した」という。(沢木香織)