ウクライナ危機で生まれた「武器市場」
2014年に始まったウクライナと親ロシア派武装勢力の紛争は、いまも続く忘れられた「戦争」だ。
特集:世界の「市場」最前線
ウクライナ東部ドネツク州ボルナバハ近郊。ミンスク合意によって戦闘はやんでいるが、ウクライナ陸軍第30機械化旅団はなお、約800メートル先の親ロシア派部隊とにらみ合っている。
前線にある旅団の地下作戦室を訪れた。そこには5人の下士官がいた。気になったのは彼らの足元。バラバラの色のブーツだった。
「俺のはウクライナ製だが、あいつのはカナダ。ほかのやつはドイツかな」
下士官の1人はそういった。正規軍がここまで不統一な装備を身につけるのは珍しい。さらに部屋の中を見渡すと、5台のパソコンもどれも違うメーカーだった。一括購入が多い官公庁への納入品ではないようだ。
「実は、パソコンも、冷蔵庫も、ここにあるのは何でも、民間の支援者や団体に寄付してもらったものばかりなんだよ」。下士官は正直に明かした。
作戦室の隣の医務室に入った。負傷兵は最初にここで応急処置を受けるという。女性看護兵が医薬品の棚を指さし、「7割が民間の寄付。政府からは3割だけ」と冷たく言う。実戦の真っ最中にもかかわらず、ウクライナ政府は前線部隊に十分な装備や物資を提供できていない。この戦線を支えているのは民間からの支援だった。