レンタカーの車内に残されていた片手鍋=熊本北署、小原智恵撮影
熊本地震直後、住民が避難中の被災地で留守宅を狙った「火事場泥棒」が相次いだ。被害特定や聞き込みなどの捜査もままならない混乱の中、関東に住む容疑者の逮捕につながった事件がある。決め手となったのは、ある場所に残された片手鍋だった。
先月16日、熊本地裁。東京都台東区の男(25)に懲役2年4カ月執行猶予3年の判決が言い渡された。神奈川県小田原市の男(21)=懲役2年執行猶予3年=と共謀し、被災した熊本県大津町のホテルや民家に侵入して計約73万円を盗んだ――。判決はそう認め、裁判官は「災害に乗じた犯行で悪質」と述べた。
熊本県警によると、関西にいた2人は昨年4月14日、熊本地震発生をラジオで聞き、翌15日、兵庫県姫路市でレンタカーを借りて熊本へ向かった。「被災地でお金を持っていそうな大きな家を狙おう」。そう話し合ったという。被災地に入ったのは本震直後の16日。高速を降りて最初に被害が目立ったのが大津町だった。
大津町の木村長夫さん(81)は17日昼過ぎ、避難先の中学校から自宅に様子を見に戻り、室内が荒らされ金庫がこじ開けられていることに気づいた。「地震で戸締まりする余裕はなかった」。床を張り替えようとためていた現金57万円はなくなっていた。
「仏壇を踏みつけた足跡があっ…