ゴール下で激しく競り合う熊本の中西良太(左)=横浜アリーナ
熊本地震からの復興を目指す地元と、被災直後から共に歩んできた男子バスケットボールB2の熊本ヴォルターズ。B1昇格でさらに地元を盛り上げようと27日の入れ替え戦に臨んだが、B1富山に85―88で敗れ、あと一歩届かなかった。
試合は互いに一歩も譲らぬシーソーゲーム。熊本の2点リードで迎えた最終クオーター(Q)も4点差以上は開かない攻防をくり返したが、1点ビハインドの残り5秒でフリースロー2本を決められ、競り負けた。
「ここまで多くの人に声をかけてもらい、励まされてきた。プロとして勝ちを見せられず申し訳ない」。試合後、地元・熊本市南区出身で主将の小林慎太郎(32)は、顔をゆがませうなだれた。
2年前の地震発生時、チームはレギュラーシーズン6試合を残していたが、当時ホームアリーナだった熊本県益城町総合体育館も天井が落ち、使用不可に。選手たちは試合から離れ、小林が中心となって救援物資の調達、配布に奔走した。避難所を回るなかでストレスをため込んでいる子どもの姿に気がつけば、無料のバスケ教室も開いた。
地元の人々の支援を続けるなかで、チームを応援しようというファンも増えた。この日も、横浜アリーナまで駆けつけた多くのファンは涙ぐみながら、健闘した選手たちに「ありがとう」と拍手を送った。
B1昇格へは、また一からのスタートとなる。保田尭之ヘッドコーチ(28)は「ファンのためにも、来季できるだけ早く昇格への道を見せなくてはいけない。宿命的なものを感じた」と決意表明。小林も「震災の厳しい状況を味わい、チームが一つになった。誇りに思う。復興もB1への道も、一歩ずつ前に出るしかない」と、力強く来季を見据えた。(松本麻美)