世界最古級の可能性があるアイヌ民族の木綿衣の前部=釧路市立博物館提供
北海道釧路市立博物館が所蔵するアイヌ民族の木綿衣(もめんい、ルウンペ)が、世界最古級の可能性が高まっている。現存する世界最古の木綿衣とされるロシアの博物館所蔵の2点と見た目も縫製技法もそっくりで、研究者は同じ時期に北海道で作られたものとみている。3月の調査終了後、早ければ5月にも一般公開される予定だ。
この木綿衣は丈128センチ、両袖を広げた幅は136センチ。釧路市立博物館の初代館長、片岡新助氏(故人)が1951年に寄贈した4480点のコレクションの一つで、前部と背部に独特のアイヌ模様が施され、虻田地域(胆振西部、後志南部)で製作されたものとみられている。
アイヌ民族の服飾技術伝承者、津田命子・道立アイヌ総合センター元学芸員が、ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館(通称クンストカメラ)が所蔵する2点と酷似していると指摘。2014年から国立民族学博物館(民博)の佐々木史郎教授(現国立アイヌ民族博物館設立準備室主幹)が代表を務める研究チームが調査を進めている。
クンストカメラは1714年にピョートル1世がサンクトペテルブルクに創建した宝物館。2点は1775年に収蔵されたと記録され、日本側の調査で18世紀初期には木綿衣に仕立てられていたとみられている。釧路の木綿衣と同じ藍染めで、羽織として着やすくするのに両袖の下にマチを施し、身幅を広げていた。刺繡(ししゅう)の模様もそっくりで、3点とも「切り伏せ」という技法で絹布を縫い付けていた。縫い糸はイラクサ繊維と絹が使われ、いずれもかがり縫いだった。
チームは、マチを付ける技法は…