唯一の常勤医だった高野英男院長(81)が昨年末の火災で死亡した福島県広野町の高野病院で、病院を運営する医療法人「養高会」の高野己保(みお)理事長が18日、朝日新聞の取材に、3月末にも養高会を解散し、福島県に病院の無償提供を申し出る意向を明らかにした。
高野氏によると、東京電力福島第一原発事故により医療提供の厳しさが増すなか、高野院長の死亡前から、県に常勤医の派遣などを要請してきたが「一民間病院だけを優遇できない」と断られてきたという。
高野氏は「民間を理由に支援ができないなら、法人を解散して、県に引き渡し、患者や病院のスタッフを守りたい」と話した。
高野病院は原発事故後も医師らが避難せず、入院治療をしてきたことで知られ、現在102人が入院。高野院長の死亡後、ボランティアの医師が非常勤で診察にあたり、2月から3月末までは東京都立駒込病院の中山祐次郎医師(36)が常勤で院長を務める。だが4月以降の院長は決まっていない。高野氏は「高野院長の強い思いでやってきたが、原発事故の被災地では民間病院の経営は成り立たない。公的な機関が引き受けるしかない」と話した。(小泉浩樹)