東武鉄道のスキー専用列車「スノーパル」を降りた乗客ら=14日午前5時20分、福島県南会津町の野岩鉄道・会津高原尾瀬口駅、工藤隆治撮影
東武鉄道のスキー専用夜行特急列車「スノーパル」が、運行開始から30年を迎えた。スキーブームの衰退でJRのスキー列車「シュプール号」が姿を消し、全国的に夜行列車自体が激減する中で、根強い人気を誇る。「バスより安全」と魅力を語る利用者もいる。
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13日午後11時過ぎ。金曜の浅草駅に6両編成の「スノーパル」が滑り込んだ。
「4番線はスキー・スノーボード専用夜行です」
アナウンスが流れ、スノーボードや大きなバッグを担いだ若者たちが次々に乗り込んだ。千葉県市川市の会社員吉川駿矢さん(25)は、同僚3人と初めて乗った。手にはコンビニで買い込んだビール。午後8時まで都内の職場で働き、いったん帰って着替えてきた。翌日の日中いっぱい滑って帰る予定だ。
「バスだと渋滞したら遅くなる。電車ならみんなで向かい合わせで飲めるし、確実に朝一番で滑れる。帰りも車より楽でしょう」
スノーパルは1986年12月にデビュー。浅草から東武のスカイツリーライン、日光線、鬼怒川線、第三セクター野岩鉄道を経由し、会津高原尾瀬口(福島県)までの175キロを5時間半で結ぶ。12~3月の金、土曜を中心に片道で運行し、終点からはバスでスキー場へ。リフト券と朝食付きの日帰りツアーで大人1人7980円からだ。ツアー以外の一般乗車はできない。
午後11時55分に発車すると、北千住、新越谷、春日部でも乗客が乗り込んだ。くつろぐ車内の様子に、複々線区間で並走する普通電車からはサラリーマンが目を丸くする。列車は星空の田園地帯に入って速度を上げた。
スキーブームの頃は満席が続き、89年度の乗客は約1万2千人に達した。この日は定員348人に対し、100人ちょっと。とはいえ、ここ10年ほど年間3千~5千人程度で推移している。宿泊プランが2割で、日帰りが8割を占める。昨冬も2回乗った東京都台東区の自営業男性(45)は「昔はユーミンを聞きながら車でスキーに行ったけど、運転は疲れる。電車は旅情があるし、お酒を飲んで温泉にも入れる」と話した。
昨年1月の軽井沢スキーツアー…