初乗り運賃が410円になったタクシーに乗り込む利用者たち=30日午後、東京都新宿区、林紗記撮影
東京都心部のタクシー初乗り運賃が30日、2キロ=730円から約1キロ=410円になった。全国の都市部で1番の手頃さ。「ちょい乗り」需要の開拓をもくろむ。タクシー業界は全国的に利用が低迷。生き残りをかけ、各地で新サービスの試行錯誤が続いている。
「初乗り410円」きょうから 都心部のタクシー
東京のJR新宿駅。西口のタクシー乗り場には30日朝から、窓に「初乗り410円」のステッカーをはったタクシーが並んだ。
「安くて、利用したい気持ちになる」と家族で新宿に買い物に来た中野区の主婦佐藤静子さん(85)は話す。駅前で降車した豊島区の歯科医師仁村秀由喜さん(56)も「普段は時々しか使わないけど、今後は近い距離でも利用したい」。「2人なら、バスよりもタクシーがお得」と喜ぶ声もあった。
利用者の歓迎とは対照的に、ドライバーからは減収を心配する声が漏れる。
JR東京駅前のタクシー乗り場で客待ちをしていた運転歴21年の男性(64)は、「初乗り利用10回分の売り上げが、これまでより3千円ほど下がる。差を埋めるほど客が増える気がしない」。別の運転手男性(55)は「都心から横浜など遠方まで乗る人は値上げ。新しい客の開拓以前に、これまでのお客さんが離れてしまう」。
一方、「外国人旅行者の利用が増えるかも」と期待するドライバーもいる。チップなども含めた国土交通省の計算では、ニューヨークは初乗り「約320メートル約420円」、ロンドンが「約260メートル約420円」。今回の運賃変更には、日本の初乗り運賃を国際水準に合わせ、外国人にも使いやすくする狙いがある。タクシー大手幹部は「最近は訪日外国人が多く、20年には東京五輪もある。利用のパイを増やすチャンス」と話す。