29日、銃乱射事件が起きたカナダ・ケベック市の現場周辺には救急車が止まっていた=ロイター
カナダのケベック市のモスク(イスラム教礼拝所)で29日夜(日本時間30日午前)、銃乱射事件が発生した。AP通信によると、ケベック市の警察は6人が死亡、8人が負傷し、容疑者が2人逮捕されたと発表した。トルドー首相は「祈りの場でのイスラム教徒に対するテロ行為を非難する」と声明を発表し、テロ事件だと位置づけた。
容疑者がどのような人物なのかや、動機などについては発表されていない。
AP通信によると、事件が起きたのは夜の礼拝中で、モスクの中には50人以上いて、39人が無事だった。容疑者の一人は現場近く、もう一人は少し離れた場所でそれぞれ逮捕されたという。カナダのメディアは当初、3人目の容疑者がいる可能性も伝えていたが、警察はいまのところ、これ以上の容疑者はいないとみているという。
トルドー氏は声明で、当局がまだ捜査をしており、詳細は不明だとしたうえで「このような意味のない暴力を見るのは痛ましい。多様性は私たちの力であり、信仰への寛容さは私たちカナダ人が大切にしている価値観だ」と述べた。
カナダは難民や移民の受け入れに積極的だ。トルドー氏は、トランプ米大統領が難民の受け入れを一時停止する大統領令に署名した直後に、ツイッターで「迫害、恐怖、戦争を逃れようとしている人たちへ。信仰にかかわらず、カナダの人はあなたたちを歓迎する」と発信したばかりだった。トルドー氏はこの時も、「多様性は私たちの力」という言葉を使っていた。
ケベック市は、首都オタワの北東約380キロに位置するケベック州の州都で、人口は約55万人。ケベック州では近年、イスラム教徒の移民が増えていることに伴う摩擦も起きている。カナダのCBCテレビによると、現場となったモスクの外には昨夏、切断された豚の頭が置かれるなどの嫌がらせが起きていた。
カナダ国籍を取得する宣誓のセレモニーの際、イスラム教徒の女性が、目だけを出す「ニカブ」と呼ばれるベールを着用できるかどうかも議論となった。前政権は禁止の方針をとったが、2015年の総選挙ではこの政策を批判したトルドー氏率いる自由党が勝利した。ただ、世論調査ではカナダ人の多くが禁止を支持し、特にケベック州では賛同が多かったという。(ニューヨーク=中井大助)