盗難が相次ぐごみ回収用容器と同型のもの。近くに住む男性は「いったい何に使うのか」と首をかしげる=兵庫県西宮市、吉沢英将撮影(画像を一部加工しています)
空き瓶や空き缶を回収するプラスチック製の容器ばかりが、兵庫県西宮市で盗まれている。昨年11月からの約2カ月半で、被害にあったのは約200個。どこにでもありそうな容器で、換金できるほどの価値もなさそうだ。いったい誰が、何のために?
阪神西宮駅からほど近い西宮神社。近くに住む60代男性が1月中旬、アパートのごみ置き場にあったプラスチック容器が無くなっていることに気づき、家族を通じて市に連絡した。「長く住んでいるが、これまでこんなことはなかった」と男性は驚く。
市によると、このアパートで盗まれたのは折りたたみ式の「ごみ回収用コンテナ」。色はブルーで、大きさは縦44センチ、横65センチ、高さ33センチ。「西宮市」と赤字で書かれている。瓶や缶などの不燃ごみやペットボトルの回収用で、市民が市から借り、収集日の朝に路上やごみ置き場などに置いて使っている。
市民からの最初の通報は昨年11月14日。同29日までに56個の盗難が発覚し、阪急苦楽園口駅から半径約1・5キロ圏内に集中した。市は県警西宮署に被害届を提出。地元自治会に注意を促す回覧板を回してもらったり新しい容器を貸し出したりした。
しかし、1月26日までに新たに141個盗まれ、1日だけで26個盗まれた日もあった。被害地域は阪神西宮やJRさくら夙川の両駅周辺など、南に広がった。
無くなったのは計197個で、新品の金額に換算すると約23万円相当という。市の担当者は「どんな目的かわからない。貴重な税金を使っているし、余分な業務も増える。早くやめてほしい」と嘆く。西宮署は窃盗容疑で捜査している。
周辺の伊丹市でも空き瓶回収のため全市域で同様の容器を貸し出し、宝塚市でも一部の集合住宅で使っているが、両市によると盗難被害の報告はないという。神戸や芦屋、尼崎の各市では、ごみ回収で同じような容器を使っていない。
容器に価値はあるのだろうか。西宮市内のリサイクルショップの店員は「何も価値がない。『西宮市』と書かれたコンテナを持ってこられても不審だし、うちは引き取らない」と話す。
東洋大学の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「お金にならなくても、リスクを負ってでも、盗むところに犯人のこだわりの強さを感じる」と指摘する。「物を運ぶのに便利だと考えたか、何らかの理由で市に嫌がらせをしているのか。いずれにせよ、我々に想像しがたいコンテナへの執着がある」と語った。(吉沢英将)