味の素冷凍食品が発売する「おにぎり丸 甘口ポークカレー」
冷凍食品の「進化」が止まらない。忙しい共働き世帯や食べたい分だけつくりたい高齢者らの需要に応えようと、食品メーカーが工夫を凝らす。めざすのは、手軽につくれるのにおいしさは本格派という「二兎(にと)を追う」新商品だ。
ニチレイフーズは3月、人気商品の「本格炒め炒飯(チャーハン)」をリニューアルして発売する。中華料理の有名店のシェフにおいしいチャーハンをつくるコツを聞き取り、たまごを入れるタイミングを見直した。従来の商品より、ごはんを包むたまごの層を均等にすることができ、なめらかな食感に仕上がったという。これまでも、超スローモーションカメラでシェフの料理シーンを撮影するなどして製法に改善を重ねてきた商品だ。
日本冷凍食品協会によると、2015年の家庭向け冷凍食品の市場規模は2944億円。この10年間で約24%伸びた。少子化の影響で弁当向けの商品は頭打ち傾向だが、急成長しているのが食卓向けだ。ニチレイの竹永雅彦・家庭用事業部長は「手軽で本格的な味を求めて、シニアや共働き家庭が夕食のおかずにするケースが増えた」と話す。
テーブルマークが3月に売り出す「海の幸のふんわり寄せ揚げ」は、イトヨリダイのすり身にエビやイカなどを練り上げ、ふんわりと揚げた。「家庭で簡単には作れない味こそ、冷凍食品に求められている」と広報担当者は話す。
マルハニチロも3月に「おいしいおかず 揚げたて食感 サクッと海老(えび)天ぷら」を発売する。サクサクした食感が長く保てる天ぷらのころもを新たに開発した。「揚げ物はしたくないが天ぷらを食べたいという子育て世帯やシニア層の声に応えたい」(広報)。
「変わり種」で勝負するのが味の素冷凍食品だ。2月発売の「おにぎり丸」は、球状に凍らせたカレーや麻婆豆腐などを、おにぎりの具としてそのまま使う。ごはんの温かさで自然に解凍するので、しばらくすると食べごろになるという。開発を担当した金沢治さんは「冷凍食品の特性を生かしながら、簡単に栄養バランスが良い食事ができる」と話す。(和気真也)