検索サイト「グーグル」の検索結果で逮捕歴などを表示されるのは人格権の侵害だとして、男性が削除を求めた仮処分申し立てで、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は削除を認めない決定をした。1月31日付。国内で同様の訴えが相次ぐ中、「プライバシーを公開されない利益が、検索サイトの表現の自由と比べて明らかに優越する時に削除が認められる」とする初めての判断を示した。
一方で、ヨーロッパで認められている「忘れられる権利」については言及しなかった。
第三小法廷は検索結果について、「現代社会でインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしており、検索結果の削除はこの役割に対する制約になる」と述べた。
そのうえで、事実の性質や内容▽公表で受ける被害の程度▽削除を求める人の社会的地位・影響力▽記事の目的や意義――などを考慮する要素として列挙。プライバシーの保護が表現の自由より明らかに上回る場合に削除が認められるとした。
男性は5年以上前に、女子高校生に金を払ってわいせつな行為をしたとして逮捕され、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で罰金50万円の略式命令を受けた。第三小法廷は「社会的に強い非難の対象。今も公共の利害に関する事実だ」と削除は認めなかった。
さいたま地裁は2015年12月、「ある程度の期間が経過すれば犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」と述べて削除を命令。欧州連合(EU)司法裁判所が認めた「忘れられる権利」を国内で初めて明確に認めた判断として注目された。だが、東京高裁は昨年7月、「法で定められた権利ではない」として削除命令を取り消していた。(千葉雄高)