母子殺害事件の差し戻し控訴審で判決公判が開かれた大阪高裁の法廷=2日午前10時27分、代表撮影
大阪市平野区で2002年に母子を殺害したとして、殺人などの罪に問われた大阪刑務所職員・森健充(たけみつ)被告(59)=起訴休職中=の差し戻し後の控訴審判決が2日、大阪高裁(福崎伸一郎裁判長)で開かれた。判決は、無罪とした差し戻し後の一審判決(求刑死刑)について「正当として是認できる」とし、検察側の控訴を棄却した。
森被告は05年に大阪地裁で無期懲役、06年に高裁で死刑を言い渡されたが、最高裁が10年に判決を破棄。差し戻し後の一審・大阪地裁は12年に無罪としていた。この日、森被告は出廷しなかった。
最高裁がより厳格な立証が必要だと指摘したため、検察側は今回の控訴審で義理の息子の妻・森まゆみさん(当時28)と長男瞳真(とうま)ちゃん(当時1)の着衣や、まゆみさんの首に巻き付けられた凶器のひもなど10点のDNA型鑑定を請求。森被告と一致する型は見つからず、ひもと着衣から別の男性の型が検出された。
検察側は「鑑定資料は劣化し、捜査関係者が触った可能性も高い。被告人の型が出なくとも犯人でないとは言えない」などとし、犯人だとの従来の主張を繰り返した。
一方、弁護側は、現場付近から見つかり、有力な証拠とされた吸い殻は変色具合から「まゆみさんの携帯灰皿を経由して事件の前に捨てられたものだ」と指摘し、森被告がマンションに行ったことの証明にはならないと反論。最高裁が「経由」の可能性を認めて差し戻した点にも触れ、「検察官の主張は最高裁の宿題に答えず、差し戻し前の一審に先祖返りしている」と批判していた。