安倍晋三首相は10日、東日本大震災6周年を前に全閣僚を官邸に集め、東京電力福島第一原発の周辺に廃炉を進める産業を集めるため、今夏にも閣僚会議を立ち上げるよう指示した。故郷に戻る避難者の雇用確保と、東電の廃炉作業を支援するのが狙いだ。
首相がトップの復興推進会議と、原子力災害対策本部の合同会議で指示した。
第一原発がある福島県の太平洋沿いでは現在、経済産業省が「福島イノベーション・コースト構想」と名づけ、溶け落ちた燃料(デブリ)の研究や廃炉技術を開発をしている企業や団体を誘致し、東電を支援している。新年度予算案では、増税して集めた復興予算から101億円を同構想に充てている。
政府は、この構想を原発周辺での農業や環境ビジネスなどに広げるため、復興庁や農水省、環境省なども協力させる考え。4月には、帰還困難区域を除くほぼ全ての避難指示が解除されるため、政府は帰還する住民の雇用の受け皿として、集積した企業や研究機関に期待する。
復興予算の枠組みが2020年度に終わることを見越し、その後も続く廃炉作業に関係省庁を巻き込むことで、廃炉支援や福島復興の予算を将来にわたって確保する思惑もある。(編集委員・大月規義)