地方公務員災害補償法の規定で、遺族が妻の場合は遺族補償年金を年齢制限なく受け取れるのに、夫の受給資格については「55歳以上」とされていることが憲法違反かどうかが争われた訴訟の判決で、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は21日、この規定を「合憲」とする初の判断を示した。
第三小法廷は、堺市の男性が規定は憲法の「法の下の平等」に反するとして、「地方公務員災害補償基金」(東京都千代田区)に対し、不支給決定の取り消しを求めた上告を棄却。男性の敗訴が確定した。
男性は1998年、市立中学校教諭だった妻を労災で亡くし、遺族補償年金を請求したが、男性が当時51歳だったために不支給とされた。第三小法廷は、遺族補償年金制度について、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するための社会保障の性格を持つとした上で、「男女の賃金格差や雇用形態の違いなどから妻の置かれた社会的状況を考えると、夫側にのみ年齢制限を設ける規定は合理的」とした。
2013年の大阪地裁判決は、規定は「性差別で違憲」と判断。だが、15年の大阪高裁判決は「配偶者の死亡時に生計を維持できない可能性は、妻の方が高い」として合憲だと判断していた。
■男女で格差がある主な制度
●労働災害の遺族補償年金
民間の労災保険、地方公務員、国家公務員の労災で、夫は妻の死亡時55歳以上でないと受給資格がない。妻は年齢制限なし。
●遺族厚生年金
夫は妻の死亡時に55歳以上でないと受給資格がない。妻は年齢制限なし。
●寡婦(寡夫)控除
死別や離婚で一人親になった時に受けられる所得控除で、父子家庭は所得500万円以下なら控除額27万円。母子家庭は500万円以下なら控除額35万円、500万円超なら27万円。
■原告男性「男女格差解消の流れに水を差す判決」
「非常に残念。長い目でみれば必ず解消される制度だろうが、男女格差解消の流れに水を差す判決だ」。東京都内で会見した原告の男性は、無念さをにじませた。代理人を務めた松丸正弁護士も「最高裁が性差別を追認してしまった。残念だが、今後は立法府に考えて欲しい」と話した。
夫の受給する場合にだけ、55…