早稲田実―明徳義塾 一回表早稲田実1死一塁、清宮は中前安打を放つ。捕手筒井=上田博志撮影
■選抜高校野球
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「怪物」がチームを引っ張るリーダーとなって甲子園へ戻ってきた。24日第2試合で、大会注目の強打者、清宮幸太郎主将(3年)が率いる早稲田実が明徳義塾(高知)と対戦する。
球場には徹夜組も含め朝から清宮君目当てのファンが駆けつけた。兵庫県尼崎市の高校1年生、打田陸人さん(15)は「フルスイングをしなくても本塁打になるところがすごい」。一昨年夏も甲子園で清宮君を見たといい、「ダントツの強打者」と期待をよせる。奈良県桜井市から来た小6の松下誠志さん(12)は、「打球の速さを目の前で見るのが楽しみ」と話した。
早稲田実は今大会も安全確保のため、開会式や試合日は他校とは別ルートで球場入りする。先頭にはいつも主将の清宮君がいる。
清宮君が初めて甲子園に出場した一昨年の夏、1年生ながら2試合連続で本塁打を放つなど持ち前の長打力を発揮し、4強入りに貢献。「清宮フィーバー」が巻き起こった。
昨秋、新チーム始動時に和泉実監督(55)は清宮君の経験豊富さを買って主将に指名した。
「キヨで大丈夫なの?という声はあった」。早稲田実中等部からの同級生で、右翼手の西田燎太君(3年)は振り返る。清宮君のマイペースな部分が主将向きではないと考える仲間もいたという。しかし、そんな不安を払拭(ふっしょく)するかのように、ラグビー界の名将として知られる父克幸さん(49)譲りのリーダーシップを早速発揮する。
チームに意識改革を求めた。自身が決めたスローガン「GO!GO!GO!」には球速5キロ、飛距離5メートル、体重5キロアップという意味を込めた。同校のアスレチックトレーナー小出敦也さん(39)に、野球部を指導する機会を増やしてもらうように頼んだ。
中学時代から同じチームだった左翼手の小西優喜君(3年)は、「キヨは中学の時にけがをしてプレーできない時期があった。正しいトレーニングの重要さがわかっていたのだと思う」と言う。呼吸法や姿勢の改善、体幹の鍛錬など本格的なトレーニングを導入した。「清宮にはストイックさがある。自分もやって周りにも言う『有言実行』の人間ですよ」と小出さんは評価する。
「キャプテンになって、キヨは変わった」。チームメートは異口同音に語る。「大丈夫だから。一緒にやるぞ」。二塁手の橘内俊治君(3年)はトレーニングを強化することに不安を抱いていたが、清宮君に誘われたことを覚えている。俊敏さを損なうことなく体を鍛えるメニューを共に考えてくれたという。
トレーニングの成果を把握するため、体重などのデータを部員同士がLINE(ライン)で共有。橘内君はひと冬を越して打球の伸びの違いを実感したといい、「清宮が引っ張ってくれたからだと思う」。
清宮君自身も昨秋の公式戦11試合で5本塁打を放った。体重は昨夏の97キロから、この春は103キロに。自ら掲げた目標をクリアした。和泉監督は、「1年生から試合に出ているから、自分の経験則でアドバイスしている。だからこそ後輩たちもすぐに受け入れられる」と話す。1年半ぶりの甲子園。清宮君は、初戦を前に仲間たちへの思いを口にした。「甲子園でおびえて後悔したらもったいない。出るからには思い切ってのびのびやる方がいい」(辻健治、円山史)
■清宮の打撃、DVDで対策
清宮選手が出場する試合では、球場の大半が味方になるような雰囲気になることがある。この日の甲子園も早稲田実が入る一塁側スタンドから埋まっていった。対戦する明徳義塾にとっては嫌な状況だが、選手はさほど気にしていない様子だ。
同校の選手は大阪や兵庫など県外出身者が多い。山口海斗主将は「高知での試合も僕たちにはアウェーでの戦いみたいなもの。昨夏の高知大会決勝も相手校への大声援に球場が包まれる中、勝った。早実への応援も自分たちのものと思いたい」と前向きに捉えて臨んだ。
清宮対策も怠りない。北本佑斗投手は、清宮選手の打撃をDVDで何度も見た。「ワンバウンドしてもいいという気持ちで、外角低めを狙っていきたい」。馬淵史郎監督は「敬遠もせず、正攻法でいくよ」と宣言し、試合に臨んだ。(高木智也)