衆院情報監視審査会で、年次報告書を大島理森衆院議長(右から2人目)に手渡す額賀福志郎会長(同3人目)=29日午前10時21分、国会内、岩下毅撮影
特定秘密保護法に基づき、政府の特定秘密の指定が適切かどうかをチェックする衆院情報監視審査会は29日、2016年の年次報告書をまとめ、大島理森衆院議長に提出した。報告書では、15年末時点で指定されている計443件の特定秘密のうち4割弱に当たる166件で文書がないことを指摘し、政府に是正を求めた。
政府は文書がない理由について「あらかじめ指定したが情報が得られなかったり、行政文書はないが、担当者の『知識』を特定秘密に指定したりした」と審査会に説明。文書がない166件のうち、具体的な情報がない時点で事前指定したのは15件(外務省5件、防衛省4件、内閣官房4件など)。担当者の「記憶」や「知識」のみを指定したのは10件(防衛省9件、公安調査庁1件)あった。
報告書は、事前指定について「対象が際限なく広がらないようにする法の基本原理から外れている」。知識への指定は「秘密が漏れた際、秘密を知る人以外に立証が困難になる」などと是正を求めた。これに対し政府は、不適切な指定の解除や文書を新たに作成するなどの対応をとる方針で、その結果、文書のない特定秘密は計36件減るという。
また、昨年の報告書で改善を求めた、特定秘密の概要を示した管理簿の記述改善などについて、「十分な措置が講じられてない事項がある」と指摘。今年の報告書では、「政府が具体的な改善を行わない場合、改善勧告を行う」と強く警告した。審査会の額賀福志郎会長(自民)は「修正されたものもあるが十分ではない」とし、政府の運用改善を求めた。
審査会は自民、民進、公明の衆院議員8人で構成され、14年12月施行の特定秘密保護法の運用を監視する国会の組織で、年次報告書の提出は2回目。(田嶋慶彦、南彰)
■「空箱」指定やめよ
特定秘密保護法の運用基準を議論する、政府の情報保全諮問会議メンバーの清水勉弁護士の話 特定秘密に指定すべき対象は、通常に業務をしていれば予測可能であり、実際に文書を作成する前から「空箱(からばこ)」をつくるような指定をする必要はない。安易に作ると特定秘密の運用が緩むのでやめるべきだ。
「空箱」指定の問題は、昨年も内閣府の独立公文書管理監から指摘を受けている。外部からの発見が偶然続くとは考えにくく、横行しているのではないか。特定秘密を管理する政府の当事者意識と能力の欠如を示しており、しっかりと検証すべきだ。