こたつでエアホッケーをする「こたつホッケー」(世界ゆるスポーツ協会提供)
運動が苦手な人でも楽しめる「ゆるスポーツ」が広がっている。ユニークなルールやネーミングも、人気の秘密だ。市民が新たなスポーツも作り、高齢者の健康増進や国際交流にも活用されている。目標は、2020年の国際大会「ゆる五輪」開催だ。
1月15日、東京都港区の東町小学校。日曜日の校庭は笑い声であふれた。
靴下の絵柄を合わせて1足にして、かごに投げ入れる「くつしたまいれ」に、磁石でつなげられたバーベルを崩れないように5人で一斉に持ち上げる「スピードリフティング」、シーソーのようにかごが揺れる「シーソー玉入れ」……。幼児から大人まで200人以上が楽しんだ。
中心となって企画した広告会社のコピーライター、澤田智洋さん(35)は子供の頃、「足は遅く、肩はよく外れ、倒立もできなかった」。スポーツには縁がなかったが、13年9月、東京五輪・パラリンピック開催が決まり、「近代スポーツの歴史はまだ200年。改善の余地があるのでは」と思い立った。
運動音痴の自分でも楽しめるスポーツを探した。14年、ビニール製の球体に体を入れてプレーするノルウェー生まれの「バブルサッカー」のイベントを開くと、多くの人が楽しんでくれた。その後、ハンドボールの普及の仕事を依頼され、手にせっけんをつけてプレーする「ハンドソープボール」を思いついた。経験者でも手が滑り、球を操るのは難しい。初心者が互角にプレーできた。
15年4月、職場の仲間らと「世界ゆるスポーツ協会」を立ち上げ、種目を作り込んだ。穴のあいたラケットを使う「ブラックホール卓球」、1メートルをいかに遅く走るか競う「100cm走」など老若男女が笑ってできるものばかり。現在、26種目を公開している。
企業や自治体も関心を示し、北海道から沖縄まで各地でイベントが開かれている。四国では各県の地元の大学や新聞社らが共同でイベントを開き、大阪では大手印刷会社の社員向け行事に。昨年5月、都内で10種目を楽しむ運動会を開くと、200人が参加した。協会によると、これまでに約1万人がゆるスポーツを体験したという。
国立健康・栄養研究所健康増進研究部の宮地元彦部長は「誰でもいい勝負ができるから、多くの人が楽しめる」と評価する。