本物の作品が入っていた額の台紙に貼り付けられていたカラーコピー。本物は和紙に刷られたものだったが、普通紙だった。上下を逆にして額に貼り付けてしまったとみられ、裏面のひもを付け替えた形跡があった=17日、横浜市中区の神奈川県庁、木下こゆる撮影
神奈川県が40年以上前に棟方志功に特別に制作を依頼し、300万円で購入した版画が、いつの間にかカラーコピーの複製に入れ替わっていた。2014年に開かれた展覧会で、観覧者に指摘されて発覚。約3年間、本物を探したが見つからず、県が17日に発表した。盗難に遭ったとみて県警に被害届を出す方針。
版画は「宇宙讃(うちゅうさん)(神奈雅和(かながわ)の柵)」という作品で、横約65センチ、縦約50センチ。県民ホール(横浜市中区)の開館に合わせ、緞帳(どんちょう)の原画として晩年の棟方に制作を依頼したものという。県が1974年10月に受け取り、緞帳制作会社に一時期預けた後、額に入れて館長室に展示していた。
本物は和紙に刷られたものだったが、コピーされたのは普通紙。上下逆さまに額に貼り付けてしまったとみられ、台紙の裏に取り付けられていた、額をつり下げるためのひもの位置を変えた形跡があった。
県立近代美術館鎌倉別館であった展覧会で観覧者から指摘を受けた後、3年も発表しなかった理由について、県民ホールの指定管理者である神奈川芸術文化財団の薄井英男専務理事は「ホール内のどこかに本物があると思って探していた」と話している。
棟方(1903~75)は鎌倉市にアトリエを置き、世界的な木版画家として知られた。(木下こゆる)