大阪市が昨年7月に施行したヘイトスピーチ抑止条例に基づく有識者の審査会は30日、ネット上に投稿されたデモなどの動画3件をヘイトスピーチと認定する答申を出した。市が発表した。審査会の認定は初めて。吉村洋文市長は動画投稿サイトに対し、削除を速やかに依頼する方針。
同条例は、路上のデモやネットの投稿で差別をあおる行為を抑止する目的で、大阪市が全国で初めて制定した。ヘイトスピーチの対象になったと思った市民の申し出を受けて、弁護士ら5人の審査会が該当するか審査。審査会が認定すれば、ネット上の動画や写真の場合は、市がネット業者に削除を求める。ヘイトスピーチをした氏名や団体名の公表もできる。ただし、罰則はない。
市によると、審査会は現在26件を審査中で、うち3件を認定した。2013年に大阪市内で行われたデモ1件と街宣2件が撮影された3本の動画で、動画投稿サイト「ニコニコ動画」に投稿された。答申によると、いずれも拡声機を使うなどして在日韓国・朝鮮人を蔑称で呼んだり、差別的な意味合いで昆虫に例えたり、脅迫するような呼びかけをしたりしたといい、審査会は条例で定めるヘイトスピーチの要件に該当すると判断した。1本はすでに削除されたという。
審査会の答申は3段階あり、今回は1回目。次の答申で発言内容や投稿者名の公表の可否を判断する。