イランと欧米など6カ国が結んだ核合意の履行状況を検証する合同委員会が25日、ウィーンで開かれた。トランプ米政権は「イランの非核化に失敗している」などとして、核合意からの離脱も含めた見直しを示唆しているが、イラン側は静観の構えを見せた。
イランのアラグチ外務次官は会合後、「米国の政策や発言が否定的な空気を作り出している」と釘を刺したものの、トランプ政権への直接的な批判は避けた。イランでは5月に大統領選があり、核合意の実績を強調したいロハニ政権は米国を刺激するような発言を控え、予測困難なトランプ大統領の言動の真意を見極めている模様だ。
会合は合意内容の履行状況を定期的に検証するのが主目的で、反イランの姿勢を強めるトランプ政権誕生後初の開催。トランプ氏の発言を受けて、厳しい議論の可能性も指摘されていた。だが、米国代表はオバマ政権時と同じ人物が担当、米国側から見直しについての言及や要求はなかったとみられる。米国務省のトナー報道官代行も24日の会見で、「90日間の見直し作業が続いている間は、核合意の内容を着実に実行する」と発言。会合でも、米国を含む全参加国が核合意を履行していくことで合意したという。
だが、トランプ氏はAP通信とのインタビューで「イランは核合意の精神に違反している。それは、イランが中東などで行っている全ての行動だ」と批判を続けている。ティラーソン国務長官も「(核合意は)イランが核保有国になる目標達成を遅らせるに過ぎない」としており、トランプ政権の核合意を含めた今後の対イラン政策は不透明だ。
イランと米英仏独中ロ6カ国との核合意は、オバマ政権が主導し、イランが10年以上にわたり核開発を大幅に制限する代わりに、国際社会による対イラン制裁解除を決めた。(ウィーン=杉崎慎弥)