日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁
日本銀行はきょう27日の金融政策決定会合で当面の政策を変更せず、「現状維持」とすることを決めた。午後3時30分から黒田東彦(はるひこ)総裁が記者会見する。会見の注目ポイントは、異例の金融緩和からの「出口」問題、つまり金融政策の正常化の手法について、初めて言及するかどうかだ。
午後3時半から日銀総裁会見をライブ中継
なぜ「出口」が焦点になるのか。日銀は黒田総裁の就任後、市場に大量のお金を流し続け、その量は今、平時の4倍に相当する460兆円にのぼっている。政策を正常化するときには、このお金をうまく大規模に回収する必要がある。
うまくできなければ、こんどは通貨「円」の信用が著しく落ち、急激な円安が進みかねない。急激な物価上昇(インフレ)や金利の急上昇も招き、国民生活には大きな打撃となる可能性がある。
そんなリスクを抱える政策であるにもかかわらず、黒田総裁はこれまで、「出口を語るのは時期尚早」と、かたくなにこの問題に口をつぐんできた。しかし、時間の経過とともに状況が変わってきたのではないか。
第一の理由は、日銀と同様に異例の規模で量的金融緩和を進めてきた米欧の中央銀行が、逆方向へとかじをきりつつあることだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和を終了して利上げに踏み切り、すでに出口政策を始めている。現状をたとえるなら、FRBは量的緩和という水道の蛇口を絞め、大量に水(お金)がたまっているプール(金融市場)からまもなく水を抜き始めようという段階だ。欧州中央銀行(ECB)も、まもなく水道の蛇口を閉めようかという段階にある。
一方、日銀はまだ蛇口をフルに開いたままで、大量の水を注いでいる状態だ。そして、プールの容量は限界に近づいている。
第二の理由は、これまでの日銀の政策のリスクに対し、あまり関心が高いとはいえなかった国会で、危機感らしきものが与野党に芽生えてきたことだ。
自民党の行政改革推進本部(本部長=河野太郎衆院議員)は今月19日、「日銀の異次元緩和が財政のリスクも高めている」として、日銀に出口のリスクをきちんと分析し、市場とも対話を始めるように提言した。アベノミクスの根幹である異次元緩和のリスクについて、自民党内からこうした提言が出てきたのは初めてだ。
第三に、5年間の黒田総裁の任期(来年4月まで)が残り1年を切ったことがある。「2年」をめどにインフレ目標を達成すると華々しく登場した黒田総裁だけに、任期中に目標を達成できないことにはじくじたるものがあるだろう。再任の可能性もあるが、総裁の「けじめ」として任期中に出口の道筋を語るべきではないか。
最近は日銀内でも「さすがに出口にまったく言及しないわけにはいかないのではないか」という意見も出ているようだ。黒田総裁が記者会見でいつ、どのように発信するか。きょうの会見でも、まずはそこを注目したい。(編集委員・原真人)