インタビューに応じる米山隆一知事=20日、新潟県庁
米山隆一・新潟県知事がツイッターでの発信に積極的だ。新潟県に関わることよりも、自身の思想、国政や日本社会の風潮などへの懸念に関する内容がひときわ目立つ。140文字の裏側にある、その心は――? 本人に直接聞いた。
――米山知事がツイッター(@RyuichiYoneyama)で発信した回数は今年に入って約150回。自身の思想、国政の動きやほかの政治家の発言に対する反応の方が、公務の紹介などよりも多い。こうした発信を頻繁にするのはなぜなのか。
理由は二つある。一つは、本当にそう思うから。言わずにはいられない、言って実現したい人が政治家になる。人間の言葉が人を変えうるという、ある種「クレージー」な面がある。政治家の本能です。
もう一つは、悪名は無名にまさるから。以前は、批判されることはネガティブなことだったので、黙っているのが個人の戦略としては良かった。
でも今は違う。トランプ米大統領は、あんなに批判されなかったら、果たして大統領になれたか。橋下徹さん(前大阪市長)はどうか。フォロワー100万人は日本の人口の1%。その3分の1が賛同すれば、国民の0・3%だ。ツイートへの反応が賛同でも批判でも、フォロワーが多いことは政治家にとって、ものすごいアドバンテージになる。
――最近では、安倍内閣が教育勅語について「教材として用いることまでは否定されない」とする答弁書を閣議決定したことや、道徳の教科書に登場する「パン屋」が「和菓子屋」に差し替えられたこと、中学の学習指導要領に銃剣道が明記されたことなどをツイッターで批判した。国政や日本社会の風潮への危機感の表れなのか。
自由が奪われることは絶対にあるべきではないというのが第一にある。第二に、偽りの愛国主義がすごく嫌いだ。教育勅語には「親孝行や友達を大事にとか、いいことも書いてある」と言う人がいるが、だったらそう言えば?と思う。結局、国家の秩序の方が自由よりも大事で、皆がぴしっぴしっと従っているのを見るとゾクゾクする。だから教育勅語を復活したい、そう思っているのでしょ?と言いたい。押し隠した保守主義みたいなのは、すごくうそくさい。
友達を大事にとか勉強しろとかいうことは本来、平易に、ていねいに、子どもたちに説明するべきこと。愛国主義や権威主義を振りかざす人は、威張りたいだけなのに、そういう労を惜しんで、愛国や道徳という言葉でごまかしている。
保守的な空気が非常に先鋭化しているのは、仕方ない部分はある。ただ、なぜそうなったかを考えると、リベラル系の人たちがちゃんと意見を言わないからだと思う。リベラルの人は優等生になろうとする。何かを発言して、ブーメランで批判が返ってくるとシュンとする。保守系の人はバシバシ言うから、結局そちらが発言権を持ってしまう。
僕は、ブーメランは怖くない。…