記者会見で市立中2年の男子生徒が自殺したことを発表する仙台市教委の大越裕光教育長(左)=仙台市役所
また、いじめが疑われる自殺が起きた。一つの自治体で3年足らずの間に、いじめが絡む中学生の自殺が2件発生。そして今回亡くなった仙台市立中学2年の男子生徒(13)もいじめを訴えていた。この異常な状況で浮き彫りになったのは、市教育委員会の問題意識の希薄さだった。
仙台市で中2が自殺 学校アンケートに「いじめられた」
29日午後に記者会見した大越裕光・市教育長と校長らは当初、「いじめというより、からかい」「『もう帰れ』『うざい』など、子どもが普通に使う言葉の言い合い」といった発言に終始。いずれも男子生徒と複数の同級生との「1対1の問題」とし、状況を深刻なものと捉えていない様子が随所に伺えた。
ただ、約2時間続いた会見の後半で状況は一変する。1年生時に関わった同級生の数は「クラス12人の男子のうち半数」だったことが判明。さらに、いじめ調査のアンケートで、別の生徒から「男子生徒が複数の同級生にからかわれている」と指摘されていたことも明らかになった。
この段階で「個人レベルのからかい」は「集団でのいじめ」という構図が色濃くなった。結果的に、男子生徒や別の生徒が訴えた「SOS」を、学校側が矮小化(わいしょうか)した格好だ。
一方、同級生や地域での取材では、男子生徒がいじめで真剣に悩んでいたことが分かった。
同級生の一人は「1年生の1学期に、クラスで『臭い』などと言われ『死んでも誰も悲しまない』という悩みを聞いた」と打ち明ける。ただ、その後は話を聞かなくなり、「落ち着いたのかと思っていた」。
男子生徒を知る高校生も「クラス全体でいじるような状況が1年生の時からあったと聞いている」。その際、教員はただ見ていたようだという。
3年生の生徒によると、今学期に入っても男子生徒の机に「死ね」と書かれたといううわさを聞いた。「友だちとは『いじめで亡くなったんじゃないか』と言い合っている」と話す。在校生には28日に校内放送で伝えた。泣いて過呼吸になった生徒が何人もいたという。
一方、「明るくていいやつで、いじめられていたとは分からなかった」「よく変顔をして笑わせてくれた」と話す生徒もいた。(山本逸生、矢田文、加藤秀彬)