NPT準備委員会で演説する岸田外相=2日、ウィーン、松尾一郎撮影
オーストリア・ウィーン訪問中の岸田文雄外相は2日、核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会で演説し、年内に核兵器を保有する国と保有しない国の有識者を日本に招き、賢人会議を設立する方針を表明した。核保有国と非核保有国の「橋渡し役」を目指す日本だが、米国など主要核保有国の理解を得られるかは見通せない状況だ。
準備委に日本の外相が出席するのは初めて。
岸田氏は演説で、国連の場で核保有国抜きで交渉が始まった核兵器禁止条約に触れ、「(交渉は)核兵器国と非核兵器国の対立を一層深刻化させる」と指摘した。そのうえで、包括的核実験禁止条約(CTBT)や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の実現を通じて「核兵器の質的・量的向上の制限をかける」との日本の立場に理解を求めた。
ただ、こうした訴えについて、トランプ政権になった米国は否定的だ。「核なき世界」を呼びかけたオバマ前政権はCTBTの批准を目指したが、4月28日にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で会見した米国のウッド軍縮大使は、CTBTとFMCTについて「包括的な見直し作業中だ」と発言。大幅な後退を印象づけた。
NPTは米ロ英仏中の5カ国に核兵器保有を認める一方、「誠実に核軍縮交渉を行う」義務を課す条約。日本政府は「NPTは核軍縮の手段」と訴えるが、米国などはそもそもNPT準備委を核不拡散のあり方について議論する場ととらえているという実情もある。(ウィーン=松尾一郎、笹川翔平)