NPT準備委員会のサイドイベントとして開かれた広島県主催のパネルディスカッションで発言する湯崎英彦知事。左は岸田外相=2日、ウィーン、松尾一郎撮影
ウィーンで2日に始まった2020年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた準備委員会で、広島県主催のサイドイベント「核軍縮を巡る核兵器国と非核兵器国の間の溝を埋める方策」が開かれた。湯崎英彦知事や岸田文雄外相らがパネリストとして参加した。会場には各国の外交官ら約100人が集まった。
岸田氏は冒頭のあいさつで「広島と長崎の惨禍の現実を、国境と世代を超えて伝えていくことが我々の使命だ」と語った。3月に交渉が始まった、核兵器を法的に禁ずる「核兵器禁止条約」を念頭に、「核保有国と非保有国の間の信頼関係を回復することが喫緊の課題」と述べ、日本政府として「(両者の)溝を埋めるための努力」をする意向を示した。
日本は3月の交渉会議で、条約に反対の立場の米国などに同調、「実際に核保有国の核兵器が一つも減らなくては意味がない」「禁止条約がつくられたとしても、北朝鮮の脅威といった現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」などと批判を展開。交渉会議をボイコットし、条約推進国やNGOから批判を浴びていた。
湯崎知事は条約交渉の進展について「歓迎する」と明言しつつも、核保有国と非保有国の溝を埋める必要性については「何をすべきで、何ができるのか。現状維持を打開するには、効果ある方法で溝を埋めなくてはならない」と述べ、岸田氏の発言に理解を示した。
その上で、昨年のオバマ前米大統領の広島訪問が核問題に国際的な関心を呼んだ例を挙げ、核政策に関わる人々らが被爆地を訪問するよう呼びかけた。
湯崎氏はまた、核廃絶に向けて「核保有国と非保有国が対話する機会がもっと必要だ」と主張。県が対話の場を作る役割を果たすことにも意欲を示した。(ウィーン=松尾一郎)