「老人福祉施設建設」の名目で買われたが、使われていない土地=埼玉県川口市安行慈林
事業に使われない「塩漬け」の土地を多く抱え、借金を膨らませてきた全国の土地開発公社。対応を先送りしてきた各地の自治体は、将来世代が背負うローンと言える特別な地方債で止血に打って出た。だが、そのツケは重く、放置された土地も全国に残る。
土地開発公社の処理に公金6千億円超 塩漬けで借金膨張
大阪府高石市の南海本線高石駅周辺の住宅街に、ぽっかりと空いた雑草地が点在する。市が区画整理や道路拡幅などの名目で市土地開発公社に買わせた土地だ。取得時期は古いもので1972年にまでさかのぼるが、事業は実現しないまま。不法投棄をやめるよう求める看板の古さが、放置されてきた歴史を物語る。
公社が土地を買うため背負った借金は計約35億円。塩漬けの間に増えた利子は約16億円にのぼる。だが、土地の価値をそれらをあわせた約51億円分と見なしていたため、帳簿上の損失は表面化していなかった。
高石市は13年度、公社の借金返済に約50億円の「第三セクター等改革推進債」(三セク債)を発行。利子が膨らみ続ける事態に区切りをつけた。だが、公社から引き取る際に実際の価値を鑑定した結果、7億円余しかなく、差額は市の損失になった。「ローン期間」は30年。返済は10年以内という三セク債の原則を大きく超え、長期にわたって将来に負担を回している。
1坪あたりの取得額が計算上300万円を超し、今は500万円以上になった土地もあるが、市の財政担当者は「価格に疑義はない」とする。市は広報で「借入利息が大きな負担」「最終・最大の課題」と訴えて「ローン」に理解を求めた。公社の金融機関への借金が膨らみ続ける状態には歯止めをかけたが、土地利用のめどがつかない状況が変わるわけではない。
だが三セク債でも、問題を解決しきれていない。
「ここは犬の運動場ではありません」「無断立入不法投棄などの行為を禁止」
埼玉県川口市の中心部から4キロほど。坂道を上ると、複数の看板と柵で囲まれた約4700平方メートルの空き地が現れた。生い茂る雑草が腰ぐらいの高さまで伸びているところも。「老人福祉施設建設」名目で取得された土地だ。だが、すぐ近くに市の高齢者施設があり、使われていない。
他にも1坪数百万円の細切れ土地や、3億円超の価値があることになっている竹やぶ……。「不良宅地買収事業」の名目で、建築基準法上、そもそも建物が造れない土地まで買い取っていた。15年度末の公社資料によると、こうした土地が今も160億円分超残る。
川口市は13年度、30年の分…