末永恵理さん=仲村和代撮影
■乳児用液体ミルクの解禁を働きかけている主婦 末永恵理さん(37)
「液体ミルクがあれば」。ネットの議論を知ったのは、銀行を辞め、横浜で0歳の娘の育児に専念していた2014年秋。母乳育児に悩んだ経験があり、ひとごとではなかった。
乳児用液体ミルクの規格基準作りへ 厚労省部会が議論
日本で売られる乳児用ミルクは、お湯に溶かして冷ましてから使う粉ミルクだけ。欧米では牛乳のようにそのまま飲める液体ミルクも買うことができる。
「なぜ?」。厚生労働省やメーカーに電話した。食品衛生法に基づく安全基準に粉ミルクの規格しかないことを知った。メーカーはニーズが把握しきれず、開発には消極的だった。ネットで署名を始めるまでたった1日。「自分でも不思議。社会とつながりたかったのかも」
1カ月で1万筆に達した署名には、母親たちの切実な声があふれていた。「一番大変な人は動けない。私がやる」。社会活動家のブログで働きかけ方を研究。国への要望の仕方は、アポなし電話をきっかけにつながった官僚に教わった。取り寄せた液体ミルクを手に行政やメーカーを訪ね、勉強会も開いた。
3歳になった娘には、「ミルクのお仕事だよ」と伝えて活動を続ける。熊本地震で災害時に役立つと注目され、政府が解禁の検討を始めた。それでも、製品化まで数年はかかる。スーパーに並ぶ日が待ち遠しい。(仲村和代)