男子グレコローマンスタイル130キロ級の園田新と組み合うオレッグ・ボルチン(左)=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター
大学レスリング界で「黒船」と呼ばれたカザフスタン出身の大型レスラーが、日本の男子グレコローマンスタイルの重量級強化のために一役買っている。山梨学院大をこの春卒業したオレッグ・ボルチン(24)。4月から新日本プロレスの親会社ブシロードに就職。自身も日本を拠点に、アマチュアレスリングで2020年東京五輪を目指す。
東京・ナショナルトレーニングセンターで5月6日まで開かれている男子グレコローマン全日本チーム合宿。187センチ、120キロのオレッグは、山梨学院大に入学した留学生の後輩とともに特別参加した。本来はフリースタイルの選手だが、日本レスリング協会の西口茂樹・強化副本部長は、「海外勢のパワー対策のために力を借りた」。
男子グレコの日本勢は、軽量級には16年リオデジャネイロ五輪59キロ級銀メダルの太田忍(ALSOK)ら世界トップレベルの選手がいるものの、重量級はリオ五輪出場権を逃すなど苦戦している。日本では体格的に選手層が薄く、全日本選手権130キロ級3連覇中の園田新(ALSOK)にいたっては「練習相手がいない」という状況だ。
そこで協会が助けを求めたのが、オレッグだった。アジア・ジュニア選手権3位などの実績があり、13年からスカウトされた山梨学院大に留学した。圧倒的なパワーとタックルで、フリースタイル125キロ級では来日以来、無敗を誇る。
下半身への攻めができないグレコの練習でも、オレッグが力で押し込む場面が目立つ。園田は「ヨーロッパの選手相手だと立っているのも必死。オレッグ選手にも同じくらい突き放すパワーがある」と感心する。
オレッグにとっても、グレコの練習は「苦手な差しの争いの練習になって役立つ」と、持ちつ持たれつ。今年は日本の社会人の大会のほか、国際大会出場も検討中。「日本で頑張って東京(五輪)を目指します」と流暢(りゅうちょう)な日本語で話した。(菅沼遼)