山梨県が人工飼育しているクニマス=9日、山梨県富士河口湖町西湖、河合博司撮影
かつて生息していた秋田県仙北市の田沢湖で絶滅したものの、2010年に山梨県富士河口湖町の西湖で約70年ぶりに生息が確認されたクニマスが「里帰り」する。9日夕、山梨県水産技術センター忍野支所で人工飼育されていたクニマス10匹が秋田県へ輸送された。
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田沢湖畔に7月1日に開館する「田沢湖クニマス未来館」で展示するため、山梨県が秋田県に期限を区切らず貸与した。クニマスは田沢湖の固有種。戦前、水力発電や農業用水のために強酸性の川の水を引き込んだため絶滅した。しかし、1920~30年代、卵が富士五湖などに移植されており、西湖で生き延びていた。環境省の野生絶滅種とされ、現在は山梨県が人工繁殖に取り組む。
受け入れ先の仙北市総務部の大山肇浩(としひろ)次長(56)は「待望の里帰りです。田沢湖のクニマスを知る人は今や85歳以上に限られる。大勢の地元住民に見て欲しい」。山梨県水産技術センターの岡崎巧・忍野支所長(49)は「心待ちにしている秋田県民の期待に応えられてうれしい。田沢湖の水質改善が進むことを願います」と話した。
現在の田沢湖は石灰で中和作業をしているが、まだ酸性が強く、ウグイなどしかすめない状況という。(河合博司)