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憲法70年、同い年の漫画家の思い 弘兼さん・尾瀬さん

写真・図版


漫画家の弘兼憲史さん=山本和生撮影


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日本国憲法が5月3日、施行から70年を迎える。作品を通じて、社会のあり方を問いかけてきた2人の漫画家に、同じ年に生まれた憲法への思いを聞いた。(岡本玄)


特集:憲法を考える


■弘兼憲史さん「世界情勢に対応できる憲法を」


日本国憲法ができた時、「もう戦争をしなくて済む」「新しい時代になる」という雰囲気が日本全体にあり、子どもの名前に「憲」の字をつける親が多かったそうです。大正生まれの私のおやじもそう。「新たな憲法の歴史が始まる」と喜んで、私を「憲史」と名付けたと聞きました。


米軍岩国基地(山口県)の近くで育ちました。米国の子どもたちと野球をして遊び、キャンプに行けば米兵がテントの張り方を教えてくれて。米軍の極東放送(FEN)からは、最先端の音楽が洪水のように入ってきました。基地を囲む金網の向こうには、カリフォルニアの青い空が広がっているようでしたね。


学園紛争の嵐の中、機動隊の間を通って、大学入試を受けました。マルクスの資本論をかじり、オルグにも出てみましたが、論旨がよく分からず、運動とは距離を置きました。憲法と自衛隊の矛盾を意識し始めたのも、この頃からでした。


憲法には「戦力を保持しない」とあるのに、イージス艦や戦車を持っている。戦力じゃないなら、何なのか。世界から「うそつき」と言われても仕方ない、と多くの疑問がわきました。


戦争を防ぐために各国と手を携える「集団的自衛権」を認めるべきだとも考え、描いたのが「加治隆介の議」でした。


「世界的なスケールでの『人類の幸福』こそが、我々政治家の取り組むべき最大の命題なのだ」。商社マンだった主人公の加治は、父の遺志を継いで、政界に飛び込みます。地元への利益誘導を否定する一方、冷戦の終結後、国連を中心に平和な世界をつくるため、国連常設軍に参加できるよう、憲法改正を唱えます。


米国を中心とした集団安全保障の枠組みの中で各国と歩調をそろえ、自衛隊を軍隊と認めたうえで、侵略戦争はしないと憲法に明記するのが現実的ではないでしょうか。


憲法9条の改正に違和感を持つ人たちは「日本が再び軍国主義に逆戻りする」と懸念します。でも、自衛隊はシビリアンコントロール(文民統制)下にあり、かつてのように軍が暴走することはありえません。アプローチは違いますが、世界平和を望んでいるのは同じです。


トランプ米大統領の誕生をはじめ、各国のトップが変わり、ますます先が読めない時代。北朝鮮問題も緊迫しています。刻々と変わる世界情勢に柔軟に対応できるような憲法にすべきだと思います。



ひろかね・けんし 1947年9月、山口県岩国市生まれ。松下電器産業に勤務後、74年に漫画家としてデビューした。代表作の「島耕作」シリーズは、83年に週刊「モーニング」(講談社)で連載がスタート。「課長」から始まり、現在は「会長」が連載中。東京都練馬区在住。


〈加治隆介の議〉 エリート商社マンが脱サラし、元建設大臣の父の急死をきっかけに政界へ。保守党内の改革派として頭角を現し、首相にまで上り詰める。主人公は、自衛隊が存在するのに「陸海空軍その他の戦力は保持しない」とする憲法9条はおかしいとして、改正を唱える。1991~98年、ミスターマガジン(講談社)に連載された。



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