イオンモールの誘致計画地。隣接地では相馬福島道路のインターチェンジの整備が急ピッチで進む=福島県伊達市堂ノ内地区
人口減少と高齢化が進む地方都市では、空洞化する駅前の中心市街地をよそに郊外の大型ショッピングモールのにぎわいが目立つ。東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故から6年が経った福島県内では、モールの誘致計画をめぐる自治体間の対立が起きている。
福島県北部の伊達市は人口約6万2千人。ここで昨年10月、流通大手イオン傘下のイオンモール(本社・千葉市)の具体的な誘致計画が持ち上がった。
計画地は約19ヘクタールの農地。国が整備を進める相馬福島道路と国道4号を結ぶインターチェンジ予定地に接しており、福島駅前からも約10キロと近い。
ただ、都市計画法で開発を制限される「市街化調整区域」で、県の「商業まちづくり推進条例」でも大型店の出店は厳しく抑制されている。誘致構想は20年以上前からたびたび浮上したが、条例などの高いハードルに阻まれてきた。
地権者らは土地区画整理事業で基盤整備を進める方針だ。土地区画整理組合の設立認可や、開発可能な市街化区域への編入手続きは県が行うが、伊達市も2022年の開店をめざして誘致に強い意欲を見せる。
この動きに、隣接する県庁所在地の福島市(人口約28万2千人)が激しく反発する。都市機能を中心部に集約する「コンパクトシティー構想」を掲げる福島市は、伊達市側の開発計画が「中心部の商店街に大打撃を与え、影響が県北地域全体に及ぶ」と主張。県に計画を認めないよう求める異例の要望書を福島商工会議所、福島市商店街連合会と連名で提出した。
県は、両市と近隣2町の「県北都市計画区域マスタープラン」に基づく土地利用方針で、この計画地を倉庫やトラックターミナルといった「流通業務地として検討する」と位置づけている。福島市はこのプランの内容も、牽制(けんせい)のよりどころにしている。
一方、伊達市の担当者は「誘致すれば県北地域に数千人規模の雇用が生まれ、交流人口も増える」と強調。「買い物客の県外流出を抑えて地域全体で発展するために、中心市街地の活性化策にも知恵を絞りたい。伊達市だけが一人勝ちしたいなどという考えは毛頭ない」と理解を求める。
内堀雅雄知事は昨年10月の会見で、「コンパクトで持続可能なまちづくりを基本とし、社会情勢の変化などを踏まえて、関係市町村の意見を聞きながら総合的に検討を進める」と慎重な言い回しだった。