東芝の綱川智社長は15日、2017年3月期決算を暫定的に説明する記者会見で、半導体事業売却を巡り、協業する米ウエスタンデジタル(WD)が売却差し止めを求めていることについて、「(半導体事業の)譲渡は正当に実施しており、(WDとの共同事業の)契約に抵触する事実はない。WDに(譲渡の)プロセスを止める根拠はないと考えている」と述べた。
東芝半導体売却、WDが差し止め申請 国際仲裁裁判所に
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「譲渡によって(事業の)支配権が移る場合、(共同事業の)相手側の同意はいらないことになっている。主張の正当性を説明していく」とも述べ、予定通り売却を進める考えを示した。売却の2次入札の日程は、「契約の通り19日で進めている」とした。
東芝は米原発事業の巨額損失で債務超過に陥り、財務改善のため半導体事業を売却する方針。しかし四日市工場(三重県四日市市)で半導体メモリーを共同生産するWDは反対し、国際仲裁裁判所に差し止めを求める申し立てを行った。
15日は上場企業の決算発表期限だが、東芝は監査法人の監査が間に合わず、暫定的に決算を説明した。担当するPwCあらた監査法人は、米原発事業の損失を経営陣が早くから認識した可能性があるとして、決算内容の見直しが必要としたが、経営陣は不要として対立。通常の決算発表が期限内にできなかった。綱川氏は「(監査法人と)双方前向きに決算手続きを進めようとしている」「監査法人との溝ではなく、両者一体となってやっている」と釈明した。
6月末には、関東財務局に17年3月期の有価証券報告書を出す必要がある。綱川氏は「有価証券報告書は法定期限までに提出できるよう、監査法人とも協力して最善を尽くす」とした。
監査法人については、「17年3月期はPwCあらたさんとしっかりやっていこうということ」と当面変えない方針を示したが、18年3月期は「監査委員会で何か決まったということは聞いていない」と述べるにとどめた。
暫定的に発表した17年3月期決算は、売上高が4兆8700億円、営業利益は2700億円、純損益は9500億円の赤字で、5400億円の債務超過。18年3月期の見通しは、売上高が4兆7千億円、営業利益が2千億円、純利益が500億円。半導体事業の売却益で債務超過は解消予定とした。