復帰45年、沖縄はいま
沖縄は15日、日本復帰から45年を迎えた。亜熱帯の気候や独特の歴史、文化の魅力は国境を越え、観光の成長が著しい。一方、日米の思惑のもと、米軍統治下のひずみや変わらぬ基地の集中が、県民の暮らしを脅かし続ける。光と影、変わるもの、変わらないもの――。沖縄のいまをみつめる。
特集:沖縄はいま
基地の街で暮らす作家が問う 沖縄は豊かになったのか
■876万人来県、年収は低いまま
4月下旬、台湾人観光客ら約1600人が乗る5万トン級の大型クルーズ船が、沖縄市の港に横づけされた。那覇市に2009年にできた専用ふ頭が満杯で、16年からこの貨物港も使う。
クルーズ船の沖縄県への寄港は昨年、387回で全国トップ。観光客数は約876万人で、復帰した1972年度の16倍に。外国人客が200万人を突破した。県民総所得に占める観光収入の割合は、軍関係収入の2倍だ。
それでも、雇用環境はバラ色ではない。本島中部のリゾートホテルで働く40代男性は人手不足のため午前8時から午後8時まで働き、残業は月70時間。年収420万円は5年前と同水準のままだ。「短期の利益率を求める外資系が増え、人件費が抑えられている」と業界内ではささやかれ、転職者が目立つという。
本土との格差是正や経済の自立を目指した沖縄振興計画では、5次の途中の16年までに約12兆円が投じられた。だが、米軍統治下で高度成長から取り残された製造業は伸ばせず、基幹産業を観光やITにシフトさせてきた。それでも、1人あたりの県民所得は年210万円前後で、上向きだが全国最低レベルのまま。失業率も4・4%と依然高く、非正規雇用者率は44・5%まで悪化している。
「近い将来、観光の波及効果で失業率は下がり、賃上げにつながるメカニズムが動き出す。そのためにも、客単価を上げる努力が必要。富裕層のニーズをつかみ、付加価値を高めたい」。富川盛武副知事(69)はそう強調する。
■子どもの貧困、深刻
一方で昨年、「子どもの貧困」で衝撃的な数字が相次いで公表された。
山形大学の戸室健作准教授が、子育て世帯のうち収入が生活保護基準以下の割合を算出したところ、全国平均13・8%に対し沖縄県は37・5%でワースト。厚生労働省の基準をもとに県が推計した「相対的貧困率」(所得が中間の人の半分に満たない人の割合)も全国平均16・3%、沖縄県は29・9%だった。
「子どもを預けるところがなく、職探しもできない」「電気やガスを止められた」。NPO法人「こども家庭リソースセンター沖縄」への子育て相談は、16年度は259件で5年前から約100件増えた。半数はシングルマザーで、その母親や祖母も母子家庭が少なくない。曽祖母は沖縄戦で夫を亡くした世代だ。
「母子家庭では十分な収入を得られず、教育機会も失われやすい。保育環境も米軍統治下で育たず、負の遺産を引きずりながら貧困の連鎖が続いている」と与座初美代表(67)は言う。民間が支えた保育所は、復帰後に公的な整備が進んだ。だが、保育料が高めの認可外保育所の割合は、全国では2割程度なのに沖縄はなお、5割にのぼる。
「振興計画は、目に見えやすいハコモノに偏り、国にも県にも教育や福祉といった人を育てる視点が欠けていた」。「沖縄クレサラ・貧困被害をなくす会」の司法書士、安里長従(あさとながつぐ)さん(45)は指摘する。
5次の振興計画は見直しが進む…