16日、首都テヘランで開かれたイラン大統領選の集会で演説する保守強硬派のライシ師(左)と撤退を表明したガリバフ・テヘラン市長=杉崎慎弥撮影
19日に投票されるイラン大統領選で、これまで世論調査で優位を保ってきた現職のロハニ大統領(68)が苦戦している。事実上の一騎打ちとなった同選挙で、対立候補のライシ前検事総長(56)が「ロハニ政権の経済政策は失敗」と経済に的を絞った主張を展開し、追い上げているためだ。ロハニ師は国民への補助金支給を再開し、巻き返しを図っている。
核合意で経済好転したか? イラン大統領選で最大の争点
特集:イラン大統領選
「16日に補助金を振り込みます」。12日、テヘラン在住の外資系企業勤務の男性(45)の携帯電話に政府からメッセージが届いた。
イラン政府は約6年前、貧困層を中心に月1回、現金を支給する補助金制度を開始。男性は家族1人につき45万5千リアル(約1600円)を受け取っていたが、月収が平均より高額として2年7カ月前に停止された。16日、男性の銀行口座には家族4人分の補助金が振り込まれていた。
ロハニ師は選挙戦で当初、補助金を増やすつもりはないと明言していた。ところが16日、北西部ザンジャンでの演説で「私が当選すれば補助金が無くなるというが、ウソだ」と強調。予想外の接戦になり、支給を停止された中間層の支持を得る作戦に乗り出したとの見方が広がっている。
これに対し、ライシ師支持者は「票を補助金で買うようなもの」と批判する。だが、ライシ師自身も貧困層への補助金増を公約に掲げる。イランは歳入が政府の予測を下回り、国家財政は厳しい。ラリジャニ国会議長は「政府はすでに年間400億ドル近くの補助金をつぎ込んでおり、これ以上増やす余裕はない」と指摘している。(テヘラン=杉崎慎弥)