岸田文雄外相は19日の閣議後会見で、航空機による北方四島の元島民の墓参について、6月中の実施に向けて調整していることを明らかにした。岸田氏は「6月中にも天候条件のよい日に実施できるよう調整を行っている。元島民のみなさんの希望も踏まえながら調整する」と述べた。
特集:北方領土問題
元島民らの北方四島への墓参は、日ロ両政府が人道的措置として毎年開催している。ただ、現在は船を使った渡航だけしか行われておらず、小さな船で海岸に上陸して急な斜面を登って墓地に近づかなければならないため、高齢者には負担が大きい。そのため、航空機の利用を求める声が上がっている。
安倍晋三首相は4月、ロシアのプーチン大統領との首脳会談で、航空機を使った墓参を実現することで一致。首相は会談後の共同記者発表で、「6月に国後島と択捉島の先祖の墓にお参りしてもらいたい」と語った。日ロ当局間で、チャーター機による国後・択捉両島の訪問に向けた調整が続いている。
日本の当局者は4月の両首脳の合意で、ロシア側との間で元島民の墓参をめぐる交渉が加速することを期待している。ただ、北方四島ビザなし渡航事業をめぐっては今月、今年度の第1陣として国後島を訪問した自由訪問団にロシア側の許可がおりず、予定していた目的地に立ち入りできなかった。日ロ双方には、元島民らへの利便性向上の姿勢に温度差もみられる。