式辞を述べる京都大の山極寿一総長。ボブ・ディランさんの「風に吹かれて」の一節を引用した=京都市左京区
京都大の山極寿一(じゅいち)総長が今春の入学式で、昨年にノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランさんの歌詞を引用して述べた式辞を、京大がホームページ(HP)に掲載したことについて、楽曲を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)が、歌詞の使用料が必要になる可能性を伝えていたことがわかった。京大は「適正な引用であり、許諾は必要ない」と主張している。
京大によると、山極総長は4月、入学式の式辞でディランさんの曲「風に吹かれて」の歌詞の一部を引用し英語で紹介。「大学には答えのない問いが満ちている。しかし、それに気づくには世界を新しい目でながめる必要がある」と語りかけ、常識にとらわれない発想の重要性を説いた。京大は英語の歌詞と日本語訳を含めて式辞をHPに掲載。末尾に「ボブ・ディラン氏の『風に吹かれて』より引用」と示した。
JASRACによると、外部からの指摘で式辞の掲載を把握し、5月上旬、担当者が京大に電話で事実関係を確認したという。広報担当者は「まず利用状況を問い合わせる趣旨で電話をした。今後については当事者間のことなので回答を控えたい」としている。
京大の広報担当者は「使用料発生の可能性については聞いたが、具体的な請求金額などは聞いておらず、JASRACからさらに連絡がない限りは対応しない」としている。
文化庁によると、一般に、著作権法上適正な引用と認められるには、引用部分の分量や必然性、引用元の明記などの要件を満たす必要があるとしている。