父親で所属ジム会長の寺地永さん(一番右)が見守るなか、スパーリングをする拳四朗(右から2人目)
父が果たせなかった夢の実現へ、親子で世界王者に挑むボクサーがいる。世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級タイトル戦(20日、東京・有明コロシアム)に臨む同級4位の拳四朗(けんしろう、25)だ。
本名は寺地(てらじ)拳四朗。京都府城陽市の出身だ。所属するBMBジムの会長で父親の永(ひさし)さん(53)が、人気格闘漫画「北斗の拳」の主人公・ケンシロウのように強い男になって欲しいと名付けた。ところが、本人は格闘技への興味が無かった。ボクシングを始めたのは中学3年のときで「スポーツ推薦で高校へ進むためだった」と永さんは振り返る。
拳四朗は奈良朱雀高、関大とボクシング部で活動し大学時代には国体で優勝。それでも、将来の夢は「競艇選手になることだった。長い間現役でいられるし、いい生活が出来ると思ったから」。競艇学校の試験に2回挑戦し、いずれも落ちた。結局、「自分にはそれしかなかった」とプロボクサーになった。
そこから快進撃が始まる。永さんの下で丸太を転がしながら斜面を駆け上がる練習などを積み、持ち前のスピードにパワーが加わった。22歳でのプロデビューから9連勝。日本王者、東洋太平洋王者と順調にキャリアを重ね、初の世界戦にこぎつけた。
挑む相手はメキシコのガニガン・ロペス(35)。今回がプロ35戦目と経験は豊富だ。世界タイトルは寺地家にとっての悲願。元ボクサーの永さんは現役時代、ライトヘビー級で東洋太平洋王者まで駆け上がったが、世界王座には届かなかった。永さんは「悔いがまだ残っている。拳四朗にベルトを取ってもらえれば、ちゃんと引退できる」。拳四朗も「自分が腰に巻くよりも先に、お父さんの肩にかけてあげたい」と意気込む。(清水寿之)