「東京ろう映画祭」を企画した牧原依里さん(右)と諸星春那さん
ろう者の世界から生まれる芸術を発展させ、新たな化学反応をもたらしたい――。「視覚の知性」をテーマに、ろう者が監督を務めたり、出演したりした劇映画やドキュメンタリーなど計12本を上映する「東京ろう映画祭」が7~9日、東京・渋谷のユーロライブで初めて開かれる。
企画したのは、ともにろう者で、会社に勤めながら映画制作をしている牧原依里さん(30)と、アーティストの諸星春那さん(35)。5年前、ローマで開かれたイタリア国際ろう映画祭に参加し、「誰にでも映画が撮れる時代が来ている」と実感、映画を撮り始めたという牧原さん。各国のろう映画祭をみてきた諸星さんとともに、「日本にもこのような機会を」と今年、東京ろう映画祭を立ち上げることにした。
上映作品は、10年の歳月をかけてろう者たちの様々な心情に迫ったフランスのドキュメンタリー「新・音のない世界で」や、ナポリを舞台に様々な問題を抱えた女性の内面世界を実験的な映像で映し出した人生ドラマ「あなたたちのために」、日本のろう映画を開拓したとされる深川勝三監督の作品、ろう写真家として国内外で高い評価を得た井上孝治さんを追った作品などをそろえた。
作品選定について「映像を通してろう者の内面的世界観や表現性を出している作品を重視した」と牧原さん。監督らによる舞台あいさつのほか、トークショー、ワークショップもある。多様な作品の鑑賞機会を増やそうと、園子温監督の「愛のむきだし」も初の日本語字幕付きで上映される。牧原さんと諸星さんは「ろう者や聴者、色々な人たちに、こういう世界があるんだ、と知ってもらえるきっかけになることを願っています」としている。
問い合わせは、東京ろう映画祭実行委員会(FAXは045・530・3078、メールはoffice@tdf.tokyo)へ。(佐藤美鈴)